2020年04月29日

家族になりたい

「友達と遊ぶ? だめよ、今は何があるかわからないんだし。マスクをつければいいってもんじゃないのよ」

 ……わかってるよ。

「向こうのお母さん、休めなくて今も働いてるみたいじゃない。無症状でも菌を持ってたりするのよ。そういう人と関わらないようにするのが自粛なんだから」

 ……わかってる。わかってるってば。

「本当にわかってるの? 自分だけ、少しならいいってもんじゃないのよ。『一人がこれくらいならいいかな』って思う気持ちが伝染して緩みが生まれるんだからね。大体、連絡なんていくらだって取れるでしょ? 会えなくて寂しい気持ちはわかるけど、今はとにかく自粛。今は昔と違ってオンラインでなんでもできるんだし」

 わかってる、わかってる、わかってるってば!! うるさい!!!!


続きを読む
posted by しょこ at 14:26| Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月15日

幸せな気持ち

 バレンタインと聞けば。
 女の子が男にチョコレートを渡す、リア充ご用達クソイベなわけで。例年女の子に縁のない俺たちはTwitterで毎年バレンタインが近付くとたくさん流れてくるえっちなバレンタインイラストや青春数ページ漫画みたいなのをとにかくRTしまくってバレンタイン楽しんでる風を装いながら当日はバレンタインで浮かれているリア充共にみんな死ねと思いながらもどこかで期待し続けて、ワンチャンあるかなーとか思ったりするものの、結局何もなくまあそうですよね的な感じで普通に一日を過ごして、普通の日常に戻り、あとはバレンタイン間に合いませんでしたイラストを横目で見つつ普通の日常に帰っていくと。まあその程度のちょっと胸がざわつくけどまあクリスマスほどじゃないかな的な2月半ばの平日。
 でも、それは例年までの話で。
 実は今年は少しだけ、期待している。今は女の子に、縁が無きにしも非ず、なので。
続きを読む
posted by しょこ at 02:35| Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月14日

小さな抵抗

 彼は、意外とモテる。モテるというのとは、少し違うのかも知れない。どちらかというとそっけなかったり、女の子を大事にしないタイプだったり、そういう部分はあるけれど、憎まれるタイプではないというか。たまに会うだけの関係だし、お互い仕事が忙しいから、なんというか、楽だ。「ごめん、遅くなったっ」
 そして、そんなバレンタイン当日。私は約束していた時間に遅れに遅れ、彼のアパートについたのは23時。仕事が終わらずいらいらして、かきあげた髪はぼさぼさになって、化粧だって乱れている。ああもう、最悪。上司の嫌がらせとしか、思えない。お局様はだいたいバレンタイン特設が始まる2月始めくらいから、ずっと機嫌が悪かった。……違うか。クリスマスからかも。
「いや、こんな遅くに来てくれてありがとう。寒かったでしょ」
 優しく微笑んで、彼は私を部屋にあげてくれる。本当に、女の子にでも片付けてもらってるんじゃないかってくらい、いつでも綺麗で片付いた部屋。正直、私の部屋のほうが汚い。暖かい部屋で、手櫛で無理矢理に髪を整える。
「何か食べてきた?」
「ううん、何も」
「じゃあ、すぐ準備するよ。食べてないんじゃないかと思って、作ってたんだ」
「助かる……! ありがとう」
 彼は料理もできて、私が来るとき、たまに食事の準備もしてくれていたりする。こういう気配りのできるところとか、本当にモテる要素が詰まっているというか。本当に、何もできない自分が不甲斐ない。
続きを読む
posted by しょこ at 22:49| Comment(1) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月15日

お返しは小さなときめきで

「先輩、私と、付き合ってくれませんか!?」
 勇気を振り絞って、少しだけ苦しそうな顔で私を見つめる、今日、初めて会った後輩の女の子。感情を真っ直ぐにぶつけて来られると、やっぱり私も、辛い。
「ごめん」
 女の子は、わかっていたと言うように、瞳にいっぱいの涙を溜めて、小さく微笑む。学園内の告白スポット、二本のプラタナスの木の前での告白……今までも何度かあったけれど、断るのも、その後の表情を見るのも、やっぱり、辛い。
 そして問題は……、今日はあと四回、この場所で、別々の子に呼び出されていることだった。
続きを読む
posted by しょこ at 01:32| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月15日

星空のステンドグラス


 僕の通う普通の何の特色もない県立高校に天才が入学してきたのは、一年前の春のことだった。少女は絵画の天才……いや、芸術の天才というほうが正しいだろう。中学時代、何のコンクールにも送ったことがなかったのに、春の絵画コンクール全てで大賞を受賞した。絵を描くスピードも速く、しかしタッチは繊細で美しい。誰の目から見ても明らかな、天才。専門の学校への編入や、海外留学まで提案されたりしたらしい。けれど彼女はそれを拒否し、この学校で絵を描き続けている。
 取材の申し込みなどもあり、彼女は一躍有名人になった。学校側も美術部と彼女を離し、空き教室に鍵が掛けられるよう改造して、彼女のためのアトリエを作った。
 彼女の絵に魅せられた僕は、入学当初から同級生である彼女を追いかけ続けている。時々アトリエの前まで行き、彼女の描きかけの絵を見つめる。彼女が作るものは油絵が多かったけれど、水彩も含め、なんでもやる。粘土をこねているのも見たことがある。
 また、休憩しているときなどは、彼女は僕を教室内に招き入れてくれることもあった。

続きを読む
posted by しょこ at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月07日

あたしのお仕事

(箱庭ロジック・雨皿真奈SSです。)

あたしのお仕事
          雨皿真奈

 今日は、先生に、作文を書くように言われたので、あたしの仕事について、書きます。
 あたしの家は、喫茶店です。喫茶「仁菜」と言います。お父さんが、店長です。お父さんは、千羽市にくるまえは普通の会社員をしていました。お父さんはとってもぶあいそうです。ほとんど、喋りません。二人でいると、とっても静かです。

続きを読む
posted by しょこ at 01:51| Comment(0) | TrackBack(0) | SS・2次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月08日

あたしにとって、特別な日

 一日中、雨が降っていた。降ったり、止んだり。ざあざあと強くなって、かと思えば弱まって。不安定で、じめじめしてて、肌寒いようなそんな一日だった。まあ、今のあたしは湿度も気温も感じることはできないんだけど。
 それでも今年も、年に一度その日は来て、梅雨に入っちゃうから雨の日が多くて、ちょっとだけ、気分が沈んで。
 六月八日。あたしにとっては、特別な日。

(『キミへ贈る、ソラの花』、東瀬まつりちゃんのSSです。
ネタバレはあまりないですが、未プレイの方はお気をつけください!)続きを読む
posted by しょこ at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | SS・2次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月14日

普通より少しだけ幸せなだけの道


 2月14日。バレンタイン。世間では女性が男性にチョコレートを贈る日とされ、充実した生活を送っている男女からしたら、本当に一大イベントだ。だけど俺は今までそういうものからは無縁で、『今年も貰えなかった』と肩を落とすようなバレンタインを送ってきていた。
 だけど、大学生になった今は少し違う。少しだけ、気になっている女の子がいる。その子も多分俺に好意を持ってくれている……気がする。まだ告白には至っていないけど、感触はいいというか、タイミングを見計らってると言うか。
 ……まあ俺の気のせいかもしれないけど。
 そうじゃなくても、同じ学科に女の子はいる。多分、毎年のように0個(母さんの分を除く)ということはないと思う。いつもより少しだけ早く、俺は大学に向かった。続きを読む
posted by しょこ at 18:18| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

同じ顔とチョコレート

「はいっ、お姉ちゃん! バレンタインおめでと〜っ」
 そう言って私の双子の妹は、私に小さな箱を差し出してきた。
「……は?」


(翠の海、空音と陸乃のSSです。
ネタバレまみれなので未プレイの方はお気を付けください)

続きを読む
posted by しょこ at 14:05| Comment(0) | TrackBack(0) | SS・2次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月21日

小さな昔話

 私が死んだのはいつだったか、私が死んでからどれくらいの月日が経ったのか。いつからかそれを考えることすらやめてしまった。世界は簡単に移り変わって、環境も世界の情勢も何もかもが早いペースで変わっていく。文明は進化し、便利になり、法は整備され、人々の生活はどんどん豊かになる。私はただその移り変わりを、黙って眺めていた。
 黙って……というのは、少し語弊がある。時々、死んだ私の姿を見れる人間がいる。そういった人に会うと、関わってはいけないと思いつつも、やはり嬉しい。
「あなた、私が見えるのね? ……少し、話をしましょうか」
 人間の寿命は短い。私の姿形は少女の時のまま止まっているけれど、人間はすぐに成長していく。私はなるべく幼い……私が死んだのと同年代くらいの子に会うたびに話しかけて、少しだけ話をする。それ以上のことは望まない。ただの、おばあちゃんの暇つぶしのようなものだ。少しだけ話をして、少しだけその子の心に、何か残ればいいと思ってる。先生気取りか、はたまたおばあちゃんの知恵袋的発想なのか、それはわからないけれど。

(『キミへ贈る、ソラの花』、サブキャラクター由梨さんのSSです。
重大なネタバレが少しありますので、未プレイの方はお気をつけください)
続きを読む
posted by しょこ at 03:47| Comment(2) | TrackBack(0) | SS・2次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。