2007年03月31日

メリーさん。

 突然、電話がかかって来た。相手は非通知。俺は少し訝しく思いながらも電話を取る。
「もしもし」
 そう言った瞬間、視界が真っ暗になる。ひんやりとした感触が目元を覆って、目が開けられなくなる。
 後ろに誰かいる。








「もしもし、私メリーさんよ。今、貴方の後ろにいるの」

「お前は可愛く「だぁれだ」って言えないのか」


------------

にゃんだこれ。
posted by しょこ at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月29日

めがねをはずす

 貴方に薦められてコンタクトを買った後に約束した。
「私、コンタクトをつけているときは貴方をずっと思うね。貴方が薦めてくれたんだもん」
 数ヶ月経った今、しばらくコンタクトをつけていない。
posted by しょこ at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

時計の針

 給料が出たので部屋の時計を買い換えた。古い時計は置き場がなかったので捨てることにした。
 せっかく捨てるんだし、と思って分解してみることにした。ばきばきと、力をいれながらいろんな部分をはずしていった。
 長針と短針と秒針を横に並べてみる。
「これが分、これが時間、これが秒」
 とりあえず長針を折ってみた。細いけど短針と同じくらいになった。秒針も折ってみた。そんなかんじでいろいろ折っていった。
 セロテープを持ってきて、折れた針をジグザグに固定してみた。ピカチュウのしっぽだと思った。
 紙粘土を買うために家を出た。
posted by しょこ at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すくえないはなし

 彼女は小説を書く。空気を吸ったり吐いたりするみたいなあたりまえのことのように小説を書く。かたかたとキーボードをたたいて、気がつくと小説を書いていて、それを私に見せる。
 彼女の話はいつも、誰も救われない。救われない話ばかりを書くのだ。彼女の小説を読み始めたころは流石に私も滅入ってしまった。今ではもう慣れてしまったけど。
「ねえ、どうして救われない話ばかり書くの?」
「うん?」
「たまには誰か助けてあげてもいいんじゃないの?」
 彼女は首を傾げてから「うーん」と唸ってこう言った。
「だって私、この登場人物たちに助けてって言われてないの」
posted by しょこ at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お弁当箱をあけるとそこは

 ある日友達が自殺した。私は少し仲が良かったので彼女の死をとっても悲しんだ。気がつくと彼女のことばかり考えるようになっていた。どうしてあの子は死んでしまったんだろう。勉強にも生活にも身が入らなくなった。
 ある日夢を見た。お昼の時間にお弁当箱を開けると、そこに彼女が自殺した理由が入っていたのだ。私は見たくないのでそのままぺろりと平らげてしまった。
 目を覚ました。私はのそのそと起き上がって机の電気をつけ、数学の宿題を始めた。

posted by しょこ at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

蛍光灯割れた

 教室の蛍光灯が切れたから、先生が取り替えて、「ここに立てかけておくから割らないでね」と言った。
 みんなそれを聞いていたけれど、いざ休み時間になるとそんなことも忘れて、いつものように駆け回る。案の定蛍光灯は割れてしまった。
 隣のクラスの先生がやってきて、「危ないからどけて」といって一人で掃除を始めた。割れたガラスの破片と一緒に真っ白な粉が飛び散っていた。あの粉がすごく危険らしい。
 気がつくと私はそれで誰をどうやって殺すか考えていた。
posted by しょこ at 15:39| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

たけやぶやけた

 近所に小さな竹やぶがあって、たまに子どもたちが遊んでいる。私もその中の一人で、日のあまりあたらない緑の空を眺めながら、ゆっくりと歩くのがすごく好きなのだ。
 ある日、その竹やぶがなくなった。放火にあって全焼したらしい。竹やぶの近くでうろうろとしていた警察は、しばらくするとうちにやってきた。近所の人が、竹やぶに火をつけている私の姿を目撃したらしい。
 確かに私はその時間家を出ていたし、私のアリバイを証明できる人はいなかった。私がキチガイでない可能性もないから、私がやったのかもしれない。
 私を補導した警察の人は何度も声を荒げて、理由を問いただした。何度も何度も繰り返すのでうるさくなって、一言こう言った。
「今放火した理由を考えてるからちょっと待って」
posted by しょこ at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お題

何月だったか忘れたけれど、お友達のオオケムシちゃんがお題をくれて、それでいっぱい小説を書いた。

「たけやぶやけた」
「蛍光灯割れた」
「お弁当箱をあけるとそこは」
「すくえないはなし」
「時計の針」
「めがねをはずす」

ありがとうでした☆
またお願いします。
posted by しょこ at 15:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月25日

お姫様同盟その1

「人魚姫を初めに可哀相だと言った人は誰なのかしら」
 彼女は突然ぽつりと呟いた。
 彼女は最近グリム童話にはまっている。それは「本当は怖い」ほうだったり、あたしが昔聞いたことがあるほうだったりといろいろなのだけど、少なくともあたしを怖がらせて遊んだりはしない。
「好きな人を思ったまま死ねたら、それってすごく幸せなことだわ」

 時々彼女はあたしの知らないどこか遠くに行ってしまうことがある。あたしの知らない彼女はどこかとても寂しそうで、それでも彼女を助けることはできない。

「もしもあたしが人魚姫の姉なら、王子もあの魔女もどっちも殺して、人魚姫を助ける」

 なんとなく彼女が人魚姫な気がして、ぽつりとそう呟いた。
 どうか彼女を連れて行かないで。
 
 彼女は本当は幻で、明日にでも消えてしまいそうで怖い。
posted by しょこ at 11:38| Comment(0) | TrackBack(1) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月24日

リスカの魔法

 願わくばただ、貴方の隣で、貴方にみとられて、死んでしまいたかった。

「手首でも切ろうかな」
 ある日、私は友達の前でぽつりと呟いた。どうしてそんな言葉を吐いたのか私もよくわからない。彼女がどんな反応をするか、ただ見たかったのかもしれない。
「え、死ぬの? やだやだ」
「死なないよ」
「え、あ。リスカってこと?」
 そう、そうすれば忘れられるかもしれない。彼との約束を律儀に守る私は死んでしまう。
「アオはアオだから、あたしは別に嫌いになったりしないよ?」
「そう」
「ただね、気になっていることがあるの」
 彼女はそう言って、持っていた紙コップをテーブルの上に置いた。
「リスカしたあとって洗い物とかどうするのかな」
 彼女は本当に真面目そうな顔でそう言った。
「だってカッターとかで切るんでしょう? 絶対染みるよね。お風呂とシャンプーはどうなの? もしかして、リストカッター用の防水絆創膏でもあるの?」
 何処の誰が、今までリスカ後のことを考えたことがあっただろうか。しかも、傷が残るとかではなく、切った直後のことを。
「それともリスカ用特殊傷薬があって、それを塗るとすぐに治るとか」
「ぷっ……」
 私は思わず吹き出してしまった。おかしいというかなんというか、なんて正直な子だろう。
「渚、あなた天才だわ」
「え? 何かおかしなこと言ってる?」
「言ってる」
 私は笑いが止まらなかった。だって、こんなことを言われるなんて私は想像していなかったから。
「笑いすぎぃ」
 彼女はなんだか恥ずかしくなったらしく、そう言って頬を赤らめた。
「そうね、ごめんなさい」
 私の頬はまだ緩んでいたが、口元を手で覆って見えないようにする。
「そろそろ、授業始まるわね。行きましょうか」
 私はそう言って立ち上がる。渚はコップに入っていたカルピスを急いで飲みほした。
「結局どうするの?」
 彼女は歩きながら、私の顔を覗き込む。
「切らないわ。だって渚が素敵なことを言うから、夢を壊したくなくなっちゃった」
posted by しょこ at 20:06| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月16日

カタカナ05:エンドレスリピート

 繰り返しを続けている間は、きっと永遠。

「こんにちは」
「こんにちは」
「元気?」
「ありがとう」
「今日は天気がいいね」
「好きよ」
「一緒にお散歩に行こう?」
「さようなら」
「お外、あったかいよ」
「こんにちは」

 彼女は少し、少女と話すと、にっこりと笑って手を振った。
「あの子がお友達?」
「そうよ」
「会話がかみ合ってないように見えるんだけど…」
「永遠を望んだ子なの」彼女はにこりと笑った。「あの子は「こんにちは」と「ありがとう」と「好きよ」と「さようなら」を繰り返すことしか出来ないの」

 あたしは少しあの子のことを見ていた。看護婦さんが近づいていって「こんにちは」と声をかけた。「ありがとう」と返した。
「繰り返している間は永遠だから、あの子は永遠を手に入れたんだわ」
 彼女はそう言って施設を後にした。あたしは帰る前に彼女の方を振り返る。彼女と目が合った。
「好きよ」
 そう言われた。

お題配布元
サイト名→無限混色ChoiceTitle
URL→http://www.geocities.jp/asagi222ouki/odai100top.html
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哲学的01:瞳の中の空

 目をつぶると空があるのは今に始まったことじゃなかった。

 私は空をここしばらくずっと見ていない。辺りは薄暗く、誰も居ない。夜になると悪夢を見る。だから私は目をつぶる。
 目をつぶるとそこには綺麗な空が広がっている。私は緑色の綺麗な芝生を駆け回っている。柔らかな風が吹いて、私は幸せに没頭する。
 そうして、何時間か経った後、がたりと大きな音がして目を開ける。
 悪夢が始まる。

「お姉ちゃんは大丈夫なの?」
 昨日、一年ぶりに姉が発見された。姉は一年前に失踪して、行方がわからなくなっていたのだ。姉は拉致監禁されていて、二つ隣の県のアパートで発見された。犯人は三十代の男だった。
 一年ぶりに会った姉はずっと目をつぶっていた。私が声をかけるとうれしそうに返事をして私の名前を呼んだ。
「お姉ちゃん、目が開けられないの?」
 私は尋ねる。私の姿を見て欲しかった。
「ううん、でも、目をつぶっていないと空が見えないから」


お題配布元
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季節01:滑らかな風

「風が滑らかなわけないじゃない!」
 彼女は突然立ち上がってそう叫んだ。ため息をついて座る。
 彼女は物書きだ。真の芸術家というのに当てはまるのが彼女だと思う。言葉の一つ一つにすごく敏感で、美しいとか美しくないとか、いつでも苦悩に苦悩を重ねながら作品を書いている。
 彼女はコンクールの締め切り前になるとあたしを呼ぶ。そして何もしなくていいから傍に居て、と言う。最初は言っている意味がわからなかったが段々理解できるようになった。
 誰かが傍にいて止めなければ、締め切り前に彼女は狂ってしまう。奇怪な声を上げたり、変なことを口走ったり、平気でする。それでも傍にあたしがいると、少なからず「あ、見られてる」と思って作品に向き直るようだ。それからたまに話しかけてくる。そう、こんな風に。
「ねえ、風が滑らかなわけないわよね?」
「さあ? そういうふうにも使うんじゃない?」
「だって、ナメラカよ、ナメラカっ! 実に美しくないわ! ああ、なんでこんな言葉書こうとしたのかしら……」
 彼女はぶつぶつと呟いて、それからしぶしぶとコンピュータに戻る。
「渚、コーヒー頂戴っ! 私の芸術感性を取り戻すのっ!」
「はいはい」
 あたしはこういう締め切り前の彼女が嫌いではない。

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2007年03月14日

ロマンチック01:星降る夜

 何が見たいかと聞かれたから、流れ星と答えた。彼は黙って笑っていた。何ヶ月も前の話。

 星降る夜

「どこに行くの」

 それは十月のある日。学校が終わった後、彼氏に拉致された。車に乗せられて何時間も暗闇の中を走り続けている。目的地を言わないので私は後部座席に座った。さりげない嫌がらせのつもりだった。

 そもそも私は彼のことがあまり好きではなかった。それでももうかれこれ十ヶ月以上付き合っている。

 私は恋愛に興味がない。好きだとか嫌いだとかそういうことにもあまり興味がないのだ。なぜ付き合っているのかと聞かれたら、それは私を好きになる人の気が知れなかったから。「十日で男を振る方法」なんてしなくても、彼は十日で私から離れていくと思っていた。それがまさかこんなことになるなんて。

「どこに行くの」

 私はもう一度彼に尋ねる。彼は少し笑うだけで教えてはくれなかった。私の苛々が限界に達する。

「お腹すいた。降りる」

「ちょ、待ってよ。もうちょっとだから」

「もういや。なんなの? 私だって暇じゃないんだから。明日までにやらなきゃいけない課題だってあるし、返さなきゃいけないDVDだってあるのよ。それを何? 人の都合を無視して勝手ばっかり!」

 勿論、課題を溜めていたのは私の所為だし、DVDだってもっと早く返しに行けばよかったんだけど、それは言わない。

「うーん」彼は少し唸ってから「わかった」と言って車を止めた。何もなく、周りは木ばっかりの人気のない山道だった。

「多分、ここからでも見えるはず」

「何? 熊か何か?」

「それも見えるかもしれないけど」

「私、熊よりも鹿が見たいわ」

「うーん、わかった。今度な」

 彼はそう言うと車から降りて、後部座席のドアを開けた。私へと差し出された手を私は無視する。一人で反対側のドアを開け、道路へと降りた。彼は不服そうにドアを閉めて、車に鍵をかける。

「わ……」

 空を見上げるとそこには満天の星空が広がっていた。私が振り向くと彼は少し笑う。

「これを私に見せに来たの?」

「いや、まだ」

「じゃあ熊?」

「今度動物園行くから、熊から離れて」

 私は黙って空を見上げる。私は星に詳しくないから、星を点で結んで星座を当てるような遊びはできない。

「あ」

 何か、小さな光が暗い夜空を切り裂くように落ちていく。しばらく眺めていると、その数はだんだんと増えてきた。

「流星群?」

「そう」彼は得意気に答える。「前に「何が見たい」って聞いたら「流れ星」って答えたから」

「そうだったかしら」

 思い出した。確か何ヶ月も前に映画に行ったときのことだ。私は人が大勢居るところで、しかも隣に知らない人が座っている中、芸術鑑賞だなんて耐えられなくて、ずっと苛々していたのだ。それで映画のタイトルではなく「流れ星が見たい」などと言った。実際は変な時間に、今流行の座席が百しかなくて、スクリーンが何個もある映画館に行ったから、私たち二人以外誰も居なかったのだけど。

 彼は気がつくと私の隣にやってきて、夜空を見上げていた。そのままの体勢で、私に「ご感想は?」と尋ねる。

「寒い」

 彼は笑って、私を後ろから抱きしめた。このまま頭をごんと後ろに倒したら、致命傷を与えられる気がするけどやらないでおく。

「こういうことされても、私、貴方に靡かないよ」

「うん。別にいい」

 無理矢理恋人ごっこをしろとか、そういうことを言わないところは少しだけ好きだ。少しだけだけど。ついでに言うとあんまり暖かくなかった。

「実を言うとね、私、流れ星見たのって初めてなの」私はぽつりと呟く。「だって夜空に星が流れていくのよ。おかしいと思わない? ヘリコプターが墜落する方がよほど現実的だわ」

「ヘリコプター墜落なんて滅多に見ないけど」

「そうだけど、そうじゃなくて。私、小さいころに動く星を見たのよ。親に言ったらヘリコプターだって言われた。そのときからなんていうか、これが墜落したら流れ星になるのかなって」

「なんてことを」

「うーん、だからそんなわけで」私は恥ずかしくて少し俯いた。「ありがとう」

 私はついでだから目をつぶって、手を組み、何かお願いしてみる。

「何を願ってるの?」

「誰かが私の課題を手伝ってくれて、ついでにDVDも返してきてくれますようにって」

 彼は少しだけ私を強く抱きしめて、耳元でこう囁く。

「それは一緒にいてもいいってこと?」

「あ、やっぱやだ。だめ」

 星の雨が降る。恋人と一緒に居る。

 それでもこれをロマンチックだと思えるようになるには、途方もない年月がかかりそうな気がしていた。

 まぁでも、それも悪くないかなんて考えている私が居る。

「お腹すいた」

「何食べたい?」

「第九を聞きながらイタリアンでシャンパン」

「難しいことを……」

 私は笑って彼の腕からすっと逃げ出す。そして何歩か前に出て、振り向き、お辞儀をする。

「フロイデ シャーネル ゲッテルフンケン……」

 ドイツ語がわかるわけではなかったけれど、第九くらい覚えている。

 星降る夜に響く小さなシンフォニー。私の求める芸術にふさわしく、美しい。

 私の歌声が夜空に溶けていく。そればっかりは本当に、「ロマンチック」だと、思った。


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管理人→富(とみ)
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それでね

「それでね?」
 俺の幼馴染、小原七瀬は昔から会話の時に人に気をつかえない。
 突然話を変えるし、自分が興味がない話題の時は「ふぅん」で済ませる。それから、偶然同時に言葉を発してしまったときに自分から言葉をつぐむとか、「先に言っていいよ」と促すことなど到底できない。
 それは彼女が俺の「幼馴染」から俺の「恋人」になっても変わることはなかった。

「それでね、昨日思ったんだけど、「不信のとき」の男共はあまりにキモ過ぎると思うのよ。ああ、俳優は嫌いじゃないよ。台詞とか態度とかね」
 彼女は何の前触れもなくそんなことを言い出した。つい数十秒前まで、二人で今日何の映画を見るか話していた気がする。確か彼女は「デスノート、つまらないって評判だけど藤原竜也は見たいのよね」と映画館の入り口に貼ってあるポスターを見つめながら言った。
 そのあとが「不信のとき」だ。共通点がなさすぎる。
「あれは男共が刺し殺されてハッピーエンドじゃないかって思うの」
 真っ白なワンピースを着て、虫も殺せないようなかわいい顔をしながらえげつないことを言う。猫のように丸い瞳を歪めて、茶色く染めた猫っ毛の髪をくるくると指でいじっていた。
「刺し殺すって、米倉涼子がか?」
「そう」
「それはあまりに可哀想だろ」
 実際、あまりに哀れすぎると思う。俺も昨日家で見ていたが(姉と共に)、なんだか可哀想だった。
「でも、キモイよね」
 七瀬はその一言ですべてを集約させる。これ以上言っても意味ないと思い、俺はポスターのほうに視線を戻した。
「ゲド戦記もつまらないらしいね」彼女はまた映画の方に戻った。「公開前からつまらないって評判なのも珍しいよね」
 ゲド戦記の公開は明日からなので「どれだけつまらないか見よう!」という選択肢はなしだ。
「やっぱりハチクロかブレイブストーリーかラブコンだなぁ」と彼女が言いかけたとき、入り口の方から二人の少女がやってきた。
 二人は近くの私立高校の制服を着ていた。そのうち一人は絶世の美少女で、真っ黒なストレートの髪が背中を覆っている。まつげが長く、実に整った顔立ちをしていた。もう一人は肩より少し長いふわふわ髪に、大人っぽく可愛らしい顔立ちをしている。思わず目を奪われてしまった

「うんっ、じゃあ今日はハチクロに・・・・・・」
 彼女がそう言いかけて、俺はすぐに彼女のほうを向いた。やばい、とすぐに思った。
「ハチクロって面白いのか?」
 俺の言葉に彼女は「うん」と即答し、ぎゅっと俺の手をとってまっすぐに前を向いて歩き出した。掴む手の力は強く、少し早足だった。
「今、女の子二人を見てたよね?」
「見てないよ」
「見てたよね?」
「見てないよ」
「見てたでしょ?」
「…見てました」
 白状してそう言うと、彼女は足を止めずにぎゅっと手に力を入れた。彼女の握力はたかがしれてるから痛くはないけれど、彼女の感情が流れ込んできて痛かった。
「ごめん」
 なんとか3文字だけ言葉を紡ぎだすと、彼女は足を止めた。
「仕方ないよねっ。すっごい可愛かったもんねっ。あたし可愛くないし、性格悪いし、仕方ないよね」
「七瀬」
 少しだけ強い口調で彼女の名前を呼んだ。少しだけ震えている肩が痛々しかった。
「そんなことないよ」
 肩の震えが止まった。強く握っていた手の力が抜けていく。
「あたしだけ見て」
 七瀬は小さな声でそう言った。俺は彼女の顔を覗き込む。不安に満ちたその瞳の中に俺の姿が映っている。
「あたしだけ、見て」
「うん」
 そっと彼女の髪に触れた。くすぐったそうに笑って、それから少し寄りかかるように手を繋ぐ。
「それでね、昨日セブンで新商品見つけてぇ」
 そうしてまたいつもの調子で、彼女はまったく違う話題を切り出した。
「セブンで?」
「うん。まあそれはいいや」
 いつものように自分勝手にまた話題を変える。
 彼女は真っ直ぐだから、思っていることをはっきり言う。誰の前でも嘘をつかないからきっと生きづらいだろう。
 不安が込み上げて、それでも信じて思いをかくさない。
「それでね」
「うん?」
「キスして?」
 人目につく場所だから少し恥ずかしかったけど、俺は盗むようにさっと彼女の唇にキスをして、それから何もなかったかのように歩いた。
 少しだけ強く繋いだ手を愛しく思った。

  *
お友達の珠君が女子高生幼馴染萌えらしくて
その話題で盛り上がっていたら書きたくなりました。
こんなんでどうでしょう。

最初はキスシーンなしでしたが、
「タイトルとキーワードである「それでね」を活かして
「それでね?今キスしてほしいな。」
みたいな文章があったらオレは死んでもいい。
まあ、何様のつもりだ、オレ。
面白かったですよ。しょこ先生の次回作を期待しておりますw 」

なんて言われたら書き換えるしかない。
posted by しょこ at 12:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

毒女

 どこでその話を聞いたのか、もしくは読んだのか、私はもう覚えてはいない。ただ、心の中にずっと残って消えない話がある。私はそれを勝手に「毒女の話」と呼んでいた。

 話自体は単純で、短い。ある女性が娘が生まれたときからずっとトリカブト入りの食事を取らせ続けるのだ。致死量に満たないほど、少しずつ。そうして娘はその毒に慣れていく。女性は量を増やしていく。
 そうして娘の体には毒が蓄積し、いつしか皮膚や血にまで毒のしみこんだ「毒女」となったのだ。

 私はこの話を詳しくは知らない。知りたいとも思わないし、なんて検索をかけて調べたらいいのかもわからない。科学的に毒が体に蓄積することなんてありえるのか、毒女の存在は確かなのか、フィクションなのか実話なのかすらわからない。

 また、私にはわからない。どうしてその女性が娘を毒女にしたかも、それで何をしたかったのかも。ただ、植木鉢を眺めるたびに思うのだ。

 そこに毒があって、誰かを毒女にすることを思い立ったら、きっと誰だってそれをしたくなる。

 私は植木鉢に植えられたトリカブトの葉を一枚毟り取って口の中に押し込んだ。葉の苦味が口の中いっぱいに広がっていく。
 
 近くの山でトリカブトの苗を見つけたのはもう二年も前のことだ。辞典で何度も確かめたあと、心が弾んだ。いつ聞いたのかわからない話、近所で手に入るトリカブト。

 『きっとこれは運命なのだ』と。

 幸せを放棄した私は時々山に向かい、苗を手に入れてくる。いつか世界が私の存在に気づいたとき、その瞬間が見たい。私はそのあとどうなるのだろうか。わからない。

 廊下がきしむ音が聞こえた。部屋にノックの音が響く。

「お姉ちゃん、いる? ごはんだって」

 妹のソプラノ声がドア越しに聞こえてくる。私は「今行く」と明るく返事をしてから「夕飯、なんだって?」と聞いてみた。

「マーボー豆腐」と妹が答える声を聞きながら、私は部屋の電気を消す。真っ暗闇の中、そっと瞳を閉じる。

 私の日常はまだ壊れない。
posted by しょこ at 12:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ファーストキス

 ファーストキスは最低だった。彼氏はあたしをベッドに押し倒してそのまま舌を入れてきた。両手を押さえつけられて、ただ、苦しくて怖かったのを覚えてる。そんな奴と今も付き合っている理由は、わからない。
 だけどあたしは今日、その彼を裏切った。ずっと尊敬している先輩と、キスをした。
「ねえ、キスしてもいい?」
 あたしは頷いた。柔らかい感触があたしの痛みを包み込む。彼のブルガリの香りに浸りながらあたしは罪に落ちて行った。
 先輩には彼女がいる。あたしではどんなにあがいても届かないくらい素敵な人。好きにはならない。報われないから。だからお願い。
 あたしのファーストキスは先輩とがいい。今までの記憶、全部忘れて、今、先輩と交わしたキスがあたしの思い出がいい。
 「ごめんね、可愛かったから」
 先輩の言葉にあたしは泣いた。この思いが背徳なら、あたしはもう何もいらない。
posted by しょこ at 12:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 1枚小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

砂時計

お題袋から3枚引いてみる。
「砂時計」
「ゴミ」
「休み」

作成日時 2006年9月29日
開始時間 19:50
終了時間 20:43
3分オーバー

文字数1105
行数63
枚数3枚と3行

  †
「砂時計」

 ガッシャーン
 あまりにも嫌な音がして、あたしは一瞬振り返るのを躊躇した。だって振り返れば「それ」が割れているのを見なきゃいけないから。あたしはため息をついて、振り返らずに玄関へと向かった。スリッパを履いて、靴箱の中にある軍手を取る。それから玄関に置きっぱなしになっていた新聞の、明らかに読まない地域のページを抜き取った。あとはキッチンに向かいスーパーの袋を一枚持って、それからもう一度ため息をつく。ショックが一番にやってこない自分が寂しい。
 リビングに向かうと、テーブルの上に置いてあったはずのガラスの砂時計がなくなっていた。床を見るとそこにはきらきらと光を反射させながらガラスの破片が飛び散っていた。それからピンクの砂と青い砂が不思議な模様を描いている。その様子を見て、あたしはやっと泣きたくなった。この子は朽ち果てるときも綺麗だ。
 この砂時計は彼氏と出かけたときに買ったものだ。小さな雑貨屋さんで売っていて、透明で綺麗な四角いガラスの中に砂時計が二つ入っている。ピンクが三分で、青が五分。引っ繰り返して遊んでいるところを彼氏に見つかって、買ってもらった。砂の中にきらきらしたラメも入っていて、本当にうっとりするほど綺麗なのだ。
軍手をはめて、そっとガラスと砂を一箇所に集める。スーパーの袋を広げたら、なんだか急に寂しくなった。
「ねえ、終わりってこと?」
 あたしは壊れた砂時計に向かってつぶやく。もし、この子がしゃべったらあたしはきっと受け入れるのに。涙が頬をつたって、ガラスの上に落ちた。
 いつからおかしくなった? いつからうまくいかなくなった? 彼のよそよそしい態度に、あたしはいつ気がついた? 気がつかなきゃ幸せだった?
 運命だと思っていた出会いも、当然だと思っていた未来も、きっと朽ち果ててしまった。砂時計が壊れたから? 違う。砂時計が終わりを教えてくれた。いつまでも付き合い続けるかわいそうなあたしを見て、きっと耐えられなくなったんだ。
 あたしは新聞紙を開いて、その上にガラスと砂を乗せられるだけ、乗せた。こぼれないように包んでビニール袋の中に入れる。残った砂やラメ、それからガラスの破片がまだ床の上で輝いていた。あたしは掃除機を持って来て、それを残らず吸い取る。そうして思い出はただのゴミになった。あたしの目の前から消えてしまった。
涙は出なかった。未来を見よう。きっと大丈夫。
 次の休みはいつだろう。次の日曜日か、はたまた土曜日か。どっちだっていい。とにかく、彼に会おう。そうして、ちゃんと終わらせよう。
 あたしは砂時計の入った袋を一度だけ両手でやさしく抱きしめて、「ありがとう」と言って笑った。

    †

お題見て瞬間的におもいついたのをがたがたと。

これの続きがこれの2話目だったら死んでもやだなぁと
思いながら書きました。繋がりそう。
http://yabane.kago-ai-chan.net/story/three.html

posted by しょこ at 12:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 三題囃 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ルージュの魔法

お題。
「口紅」
「海」
「花火」

見た瞬間「書けるかこんなの」と思った。

書き始め 21:45
書き終わり 23:05
30分オーバー

文字数1662
行数100
枚数5枚と0行

    †

「ルージュの魔法」

 私は口紅をつけない自分を愛せないのに、彼は口紅をつけた私を愛してくれません。
 手は握ってくれても、ぎゅっと抱きしめてはくれません。口付けはくれません。気づかれないように距離を置きます。私が気づかないとでも思っているのでしょうか。
 私は自分の唇の色が好きではありません。上唇と下唇の色が違って、あまりにも滑稽でぶさいくなのです。私はそれがずっとコンプレックスで、口元を手で覆うことが癖になってしまいました。
 大学に入ってから、私は口紅をつけるようになりました。口紅は素敵です。私のコンプレックスを隠してくれるのです。初めてつけたとき、私は本当に感動しました。私の今までの悩みが全て吹き飛んでしまったのですから。
 ファンデーションもアイメイクもチークも全てチープコスメな私ですが、ルージュとコンシーラは高級なものを使っています。私は自分のことを好きになれたし、恋人だってできました。本当に幸せです。
それなのにどうしてでしょう。私の一番愛する人が私の愛する私を愛してくれないのです。私はそれをずっと気にかけていました。
そう。だからなのです。私の大好きなもの、「花火」「夜」「海」の三つに関係する有名な花火大会に彼と一緒に行くと言うのに、私が助手席で泣きそうな顔になっているのは。
「どうしたの?」
「なんでもない」
 彼の問いかけに私は口元を隠しながら答えました。彼が嫌がるから口紅をつけなかったのに、それを今はとても後悔しています。今日のために実家から持って来た紺の浴衣も赤い帯も、この唇のせいで全ておかしく感じました。こんなことならジーパンにTシャツのほうがブスに似合う服っぽくてよかったかもしれません。なんだかとっても申し訳ない気分になってきました。
 私は窓の外を眺めました。日が傾き始めていて、雲が紫に染まっていました。私は紫式部の歌を思い出しながらその景色を眺めていました。
「酔ったの?」
「へ?」私は驚いて振り返ります。「お酒飲んでないよ?」
「聞いてねえよ」
 私は頬が熱くなるのを感じました。遂に会話すらかみ合わなくなってきました。重症です。最悪です。「酔ってません」と下を向きながら答えました。
「疲れた? どっかで休む?」
 彼の言葉に私は頷きました。耐えられませんでした。サイドミラーに写る自分を見たくなくて、私はまた目を伏せました。
「行きたくないの?」
「違う」私は首を横に振りました。「海も花火も、すごく好き。すごく、楽しみ、だった」
「だった?」
「うん」私は唇をかみ締めました。「ねえ、口紅、つけていい?」
 私が尋ねると彼は目を丸くしました。
「どうして?」
「だって、気持ち悪い」
「何が?」
「私がっ!」私は耐え切れずに声を荒げてしまいました。「口紅をつけてない自分が気持ち悪い。こんな汚い色、見て欲しくないっ」
 ずっと嫌だった。ずっと嫌いだった。やっと、自分を好きだって言えそうだったのに、こんなのってない。
 私の髪を、彼がそっと撫でました。私は唇をかみ締めたまま、彼を見ようとしませんでした。
「俺は、今のお前が好きだよ。そのままでいいよ」優しい声が車の中に響きました。延々と続く重低音と小さな揺れが私の心を落ち着けていきます。「俺の前では自然でいてよ。気持ち悪くなんかない」
 私は恥ずかしさのあまり下を向きました。全身が熱くなるのを感じました。汗まみれになった手を、浴衣を掴むことでごまかしました。彼は再び私の髪を撫でました。
「まじめに運転してください」
 私は彼に今の自分を見て欲しくなくて、そう言いました。彼は苦笑いをして運転に戻ります。
 私は口元を手で覆ったまま「ありがとう」と言いました。そんな簡単に了承することも、自分を好きになることもできません。私はサイドミラーに自分の姿を写してみます。気持ち悪い唇は、今日も変わりません。
それでも。
 今日だけはこのままでもいてあげてもいいかな、と思えるほどの力はありました。私は彼の横顔を少しだけ見つめていました。
「何?」
「なんでもない」
 大好きだよ、とは言いませんでした。
posted by しょこ at 12:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 三題囃 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

雨の所為

「大丈夫、ゆーちゃんは悪くないよ」
 彼女はやさしく微笑む。振り向いた先に光る紫陽花が彼女の笑顔をいっそう際立てる。
「雨の所為」

雨の所為

 私は雨が降るとおかしくなってしまうらしい。自覚なんて勿論なくて、ぶちりと途切れた空白の時間と事実だけが残る。
 私はどうやら雨の日になると、家で飼っている金魚を一匹、殺してしまうようなのだ。気がついたとき手は生臭く湿っていて、嫌な液体がスカートを汚していたりする。その度に双子の姉であるみなみが、死んだ金魚を庭の紫陽花の下に埋めに行く。
 私は雨の日に突然時計の針が大幅に傾いているのをみると焦って庭へと飛び出すのだ。またやってしまった、そう思って紫陽花の傍へ行くと、女の子が傘を差して地面にうずくまっているのだ。
 私は可愛がっていた金魚の死を悼み、殺したのが自分だということを自覚し、埋めてくれるみなみを思って、泣き出してしまう。
 その度にみなみは「雨の所為」だとそう言って優しく笑うのだ。

 水槽にはたくさんの金魚がいて、みなみはたまに減った分の金魚を買い足してくれる。数え切れないほどいるから、親はその金魚が時々変わっていることにまったく気がつかない。
 うちの金魚は決して大きくなることはないだろう。大きくなる前に、きっと私が殺してしまうから。それでも変わりはいくらでもいる。違いに気がつく人は誰もいない。
 ほら、私と同じだ。
 そう思った日、雨が降っていた気がした。
posted by しょこ at 12:10| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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