2013年01月05日

ぐつぐつ

ぐつぐつ、ぐつぐつ。
私は頑張って、お料理を作ります。

私がお兄ちゃんのことを、ちゃんと異性として好きなのだと気付いたのは、6年ほど前のことです。
その時、私はお兄ちゃんとお母さんと、3人で暮らしていました。
お母さんが居なくなったのは、4年ほど前のことでした。
お兄ちゃんは目に涙を溜めながら、「辛いけど2人で頑張って行こう」と言ってくれました。
あの時のお兄ちゃんは本当にかっこよかったです。
お兄ちゃんには内緒ですが、お母さんは庭にある、梅の木の下に居ます。


広い家にお兄ちゃんと2人きり。
大変だったけど、お兄ちゃんが大学に行きながらアルバイトをしてくれて、それに貯金と奨学金とで、なんとか食べて行くことは出来ました。
お料理はずっと、私が担当です。
食費や光熱費を切り詰めて切り詰めて。そうやって頑張っている私を見て、お兄ちゃんはとても喜んでくれました。
私が妹で良かったと、自慢の妹だと、何度も言ってくれました。

お兄ちゃんと私が結ばれたのは、2年前の冬でしたね。
すごくすごく、寒い夜でした。お兄ちゃんは遅くまでバイトに行ってて、私はご飯を作って、お兄ちゃんの帰りを待っていました。
お兄ちゃんはバイト先で嫌なことがあったみたいで、なんだかとっても落ち込んでいるようでした。
「ごめんね、無理しなくていいからね」と言うと、お兄ちゃんは私のことをぎゅっと抱きしめてくれました。
あの時のことは今でも覚えています。すごくすごく、嬉しかった。
すごくすごく、満たされて行く感覚……。外から帰ってきて、まだ温まりきっていない、お兄ちゃんの少し冷たい肌……。
胸の高鳴りを感じて、私はお兄ちゃんに「好きです」と伝えてしまいました。
お兄ちゃんは少しだけ困ったような顔をしましたが、私を強く抱きしめてくれました。

その日から、私とお兄ちゃんの秘密の関係は始まりました。
けれど、その日からお兄ちゃんが、少しだけ辛そうな顔をすることが増えました。
私を抱きしめながら、私の髪を撫でながら、幸せそうに微笑みながら、時々。
時々、とても、辛そうな顔をするのです。
私のことを愛している気持ちは、あるのだと思います。それでも胸に抱いてしまう背徳感と、戦っているのでしょうか。
そんなもの、気にしなくていいのに。
お兄ちゃんは、優しすぎるのです。他人のことなんて気にしなければ、この家にも、この世界にも、存在するのは私とお兄ちゃんだけになるはずなのに。

それからしばらくして、お兄ちゃんは私に、「恋人だ」と言って、女の人を紹介しました。
その人のことをお兄ちゃんが愛してるわけじゃないことはすぐにわかりました。
私の傍にずっといることに、耐えられなくなってしまったのだと思います。だからその人で、忘れようとしているのだと感じました。
お兄ちゃんは私から目を逸らして、何度も辛そうな顔をしていました。
お兄ちゃんがいない時に、その人を呼んで、お兄ちゃんは貴女を愛しているわけじゃないとちゃんと伝えました。
だって、お兄ちゃんは私のことが好きなのだからと、そう言ったらその人は大変取り乱しました。
気持ち悪いと、何度も言いました。
それからどうやら私の大事なお兄ちゃんと夜を過ごしたようなので、



その人は可哀想なことに事故で亡くなってしまいました。
私が酷く辛そうで、傷ついているような顔をしたら、お兄ちゃんは優しく私を抱きしめてくれました。
けれど、辛そうな顔は続いたままで、私が何を言っても、素直には受け入れてもらえませんでした。
お兄ちゃんが気になるのなら、ずっとずっと内緒にすればいい。
子どもなんていらないし、でもお兄ちゃんが欲しいと思うなら、養子を取ってもいいです。
それでも周りの目が気になるなら、誰も知らない土地に行って、夫婦だと言い張ればいいです。
禁忌なんて、人が勝手に決めたもの。
ゆえに、ほんの少しでも状況を変えてしまえば、全てはうまく行くのです。
けれどお兄ちゃんは、私の言葉に納得できないようでした。

私も高校を卒業して、ちゃんと働き始めて。
その頃に兄さんは私に「次の人」を紹介しました。
次の人はなんだかとても、明るい感じの人でした。お兄ちゃんだけではなく、私とも仲良くなりたいとそう言いました。
お兄ちゃんの表情も、なんだか穏やかになって、

どうして。

お兄ちゃんが遠くに行ってしまうのを感じました。
どうして。
ずっと傍に居たのに、どうして。どうして。何が、どうして。
どうして、何が、いけないと言うのでしょう?
何が違うと言うのでしょう? 私のお兄ちゃんを愛する気持ちは、何と、比較して、何が、いけなくて、何が、どうして。
どうして。
どうして。

私を愛してくださいと、私はお兄ちゃんに言いました。
お兄ちゃんは私に頭を下げました。ごめんと、何度も言いました。
こんなのは駄目だと、私を諭すように言いました。
愛とはなんでしょう? 愛する、とは?
駄目とはなんでしょう? あの人と、私と、同じ人間なのに。
何が違って、何が駄目で、そんなもので、愛は消えてしまうの?



ぐつぐつ。ぐつぐつ。
お料理はお母さんがいなくなってからずっとしてきたので、すごく得意です。
包丁を研ぐのもすごく得意だし、

今日はこれからあの人が来ます。
仲良くなりたいので、一緒に食事をしたいと言ったら、喜んで来てくれることになりました。
私の作った料理を、あの人は美味しいと言って食べてくれました。
お兄ちゃんは数日間、突発ですが遠くに住んでいるお友達のところに行くことになったそうです。
お兄ちゃんから、あの人にもメールがあったみたいで。
「しばらく一人でご飯食べるの、寂しいな」と私が言ったら、
その人はすぐに、「じゃあしばらくは夕ご飯一緒に食べよう」と、そう言って笑ってくれました。
なんてなんて優しい人。
優しい優しいこの人と、優しい優しいお兄ちゃんじゃ、吊り合わないよね?
ねえ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんも、そう思うよね?

包丁を持ち出したとき、お兄ちゃんは抵抗しませんでした。
どこか安堵したように息を吐いて。
こうなることが、わかっていたように。
こうなることを、望んでいたように、お兄ちゃんは笑いました。
可哀想な、可哀想な、お兄ちゃん。
私を愛するあまり、全てに耐え切れなかった、可哀想なお兄ちゃん。
お兄ちゃんと私には、この世界は少しだけ、狭すぎただけなの。
きっと、それだけ。

さて、目の前のこの人と、私。
もう少ししたら、私からお兄ちゃんの携帯でしているメールも、終わりにします。
この人はきっと、心配そうな顔をするでしょう。でも、私を元気づけるように笑ったりして。
なんてなんて、いい人。
でも、ちゃんと調べればメールがこの家から発信されてることはわかるでしょう。
そんなことはいいのです。きっと、お母さんも見つかると思います。
でもこの人はどんな顔をするのでしょう? 何を思うのでしょう?

お兄ちゃんが私とこの人の、
血肉になったのだと、

言ったら、

 ◆

新年書き始めSS。
年末に「私、そういえば実妹って書いたことない!」と思って、
「あ、私そういえば人肉って食べさせたことない!」と思ったら、こうなりました。
妹と「この人」の百合ですね。(違います

句読点で止める形で雰囲気を出すのは難しいです。簡単に見えるんだけど。
妹とこの人をこの後攻略する展開とか一瞬考えた!重い!!
posted by しょこ at 03:39| Comment(2) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そっちですかwwwお兄ちゃんの方ですかw
ヤンデレってこわいです・・・
Posted by at 2013年01月05日 20:08
コメントありがとうございます!
ヤンデレ怖いですよね……妹怖い……(違
Posted by 御厨 at 2013年02月15日 23:11
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