2013年09月03日

電気の紐が切れた

 電気の紐が切れた。
 寝る前のことだった。電気を消そうと紐を引っ張った時に、ブチっと何か大きな音がして、電気の紐は動かなくなった。
 とりあえず眠かったので寝た。
 次の日、カーテンを開けて、なんとかして電気の蓋を開けてみる。どうやら、ヒモが中で切れてしまってるようだった。とりあえずパソコンで調べてみたら、紐は経年劣化するものだし、よくあることらしい。なんとかならないかといろいろしてみたら、わりと大事な部分らしいパーツの爪が壊れた。
「……見なかったことにしよう」

 電気の蓋を閉めて、私は小さく呟く。私の住んでいるアパートの電気は据え付けの天井電気で、自分でどうにかするのは無理だと思う。だから、大家さんに連絡して、修理の人をよこして貰わないと。
 ……修理費とか、取られるかしら。それに、部屋の中にも入る……よね。
 私は部屋を見渡してみる。足の踏み場だけは何とか確保されてるけど、それだけ。読みかけの漫画も本棚に入りきらなくなってるし、この部屋に人を入れる……?
「しばらく、このまま過ごそう」
 私はそう決意した。大丈夫、しばらくは、きっと、多分。
 私は働いていない。前に働いていた時の貯金を切り崩しながら、少額で株とかを買って、なんとか細々と生きている。週に1度だけ外に出て、食材を買い込んで、あとは引きこもって遊んでばかりいる。時間だけは山程あるから、流行っているものには基本手を出している。最近は提督業とプロデューサー業が忙しい。あと、他にも連動でやってるソーシャルゲームとかがいっぱいある。だから、本当は電気も自分で直せればいいんだけど、さすがにそれは専門外だった。
 何より、人に会わなきゃいけないのが嫌だ。鍵開けておくから修理しといてってわけにはいかないかな……とか、そんなことばかり考えている。いや、とにかくこの部屋を片付けないと無理か。荷物であふれたごちゃごちゃとした部屋は、とても一人暮らしの女性の部屋とは思えないわけで。しかも恋人とかもいないわけで、友達と連絡とることもほとんどないわけで。
「片付けなきゃあ……」
 だらだらと口にして、なんとかゴミ袋を持つ。とにかく目に付いたごみを捨てていく。だけど、そもそも捨てられない物が多い。いらないわけじゃないもの、入れるところがないもの。何か収納できそうなものを買う? うう、めんどくさい……とにかくめんどくさい……。お金だってそんなにないし、電気だって壊したのばれたらお金取られるし。
 そんな感じでごたごたしてたら、あっという間に日が沈んで、部屋は真っ暗になってしまった。とりあえずキッチンの電気だけ付けるけれど、こっちまではほとんど光が来ない。パソコンの光だけを頼りに……。……片付けはできないか。
 結局夜中までパソコンをして、寝た。いつも通りだった。

 次の日、起きたら昼を大きく過ぎていた。まずい、ほんの少しだけの活動時間が、また減っていく。とりあえず少しずつでも片付けよう。今日は、右端……とか。
 あ、でも。そう思い日課であるソーシャルゲームをこなす。この手のゲームは時間回復制なので、起きた後が一番忙しい。
 右端の山になっている部分を、とりあえず分類して束ねておく。袋に入れて、とりあえず整理しているように見せかけた。
 さて。
 そうしているうちにまた夜が来る。

 世界が闇に包まれる。暗い部屋でパソコンをいじっているだけの私。生産的なことは何もしてない。お米を炊いて、適当にご飯作って、あっためて食べるだけ。掃除は全然しないし、洗濯だって週に何度かだけ。だって外に出ないし、洗濯物だって溜まらないんだもん。
 くだらない、生活。わかってる、このままじゃいけないって。
 多分、働かなきゃいけない。多分、家から出て、ちゃんと、人間らしく生きなきゃいけない。わかってる、わかってるけど。
 ゲームに身をゆだねて、まとめブログ見て、ツイッターを追ってれば、一日なんて簡単に終わる。大事かもしれない一日。けれど私にとっては、大したことのない一日。暗い部屋。私は簡単に飲み込まれていく。小さな存在なんてもんじゃない。いらない、存在。わかってる。
 けれど、働く気も起きない。仕事を探すって、面倒くさい。仕事についたら、きっともっとメンドクサイ。人間関係とか、仕事押し付けられたりとか、残業とか、無意味に怒られたりとか、そういうのから出来るだけ逃げてたい。だめな思考だってわかってるけど、お金なんていらないから、そういうのはもうしたくない。
 それならそれで実家に帰るとか、家賃の安いところに引っ越して生活環境を変えるとかしなきゃいけないんだけど、それだって引っ越し代もかかるし、考えるのが嫌だ。
 憂鬱になることも、自分を責めることも、もう疲れてしまった。慣れてしまったと言ってもいい。考えることすら、面倒くさい。
 暗闇と同化する。好きな時に起きて、好きな時に眠る。時間を、消しながら、ただ、生きる。

 次の日。この日も起きたら昼を過ぎていた。日課のゲームを、とりあえずこなす。電気を直すために、今日も動かないとと思ったけれど。
 ……直さなくても、いいか。誰も来ないし、暗くてもパソコンは出来るし、電気付けなかったら、電気代も浮くんじゃない? 暗かったら片付けできないのも仕方ないし、部屋汚いのもあんまり気にならないし。
 ……よし、そうしよう。
 私はもうしばらく自分に理由を付けながら、この部屋で怠惰な生活を送ることにする。
 とりあえず今やってるソシャゲが全部サービス終了するまでは、出来ることなら働きたくない。

 ◆

電気の紐切れちゃったんですけど!
でももうすぐ引っ越すからめんどくさいんですよね! あ、いや、片付けはするんですけど!
丁度いいからそれをお題にSSを書いたらいいと言われてだらだら書きました。私は暗いけど働きます。
posted by しょこ at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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