2013年09月04日

ハーレム

「ここにはヤンデレが3人います」
 目の前にいるメガネを掛けた幼馴染は、冷静にそう切り出した。
「危険なので今は各自部屋に監禁されています。今話している内容は、彼女たちには聞こえません。
 貴方は彼女たちに何故か愛されております。まずは経過を説明しましょう」
 俺が今いるのはリビングのような場所。けれど、それに不釣り合いな――四つの鉄の扉。多分、そのうちの三カ所は小さな部屋に繋がっていて。
 そこに、彼女たちが、いる。
「少女たちを、A、B、Cとしましょう。彼女たちは幼い頃からの親友でした。Aは、去年貴方と同じクラスでしたね。貴方に恋をしたのは、その時だったようです。
 Aは親友であるBとCに時々貴方の話をしていました。今年に入って3人は貴方と同じクラスになりました。そこからは貴方も知っていますね。貴方は彼女たちに誘われて時々遊ぶようになりました。3人の女の子の中で男は一人、しかもそれぞれが自分に想いを寄せてくれてる……それはそれは幸せだったことでしょう。
 貴方が幸せだったのと同様に、彼女たちも貴方への想いを募らせていきました。
 いいですね、ハーレム。
 3人はお互いの気持ちに気付いていました。だけど、最初は正々堂々と恋愛勝負しようと思っていたそうです。けなげですね。
 けれど、ある日、その関係に綻びが見られるようになりました。Cが、飲み物の一つに薬剤を入れたのです。それを飲んだのはB……。Bは体調を崩し、入院することになりました。BとAは犯人に怯えました。次は何をされるかわからないと……Cを恐れました。けれどCは、ほんの悪戯心だったそうです。悪いと思っていながらも、やってしまったと。
 ここからは派手になりますので、貴方もよくご存知かと思います。退院したBは口論になり、Cを階段から突き落としました。Cは骨折しましたが、そうしたら貴方はCを心配するようになりました。それがAとBには不快に映ったようです。けれどAはBのしたことが許せませんでした。いくらCがしたことだからと言って、階段から突き落とすなんて……と、そう思っていました。けれどすっかり人間不信に陥っていたBはAにもけがを負わせました。それは通り魔の仕業になりましたね。
 どんどん、伝染していきました。Cの悪戯から始まって、全てはどんどん壊れていきました。元々Aは、自分が最初に好きになった人をBとCも好きになったことが許せなかったのかもしれませんね。貴方とCが一緒に居るのを邪魔するようになりました。貴方にBとCのことを悪く言いました。それをCに知られて、Cは貴方の目の前でAを突き飛ばしましたね。
 3人はそうして気付いたんです。2人を排除しなきゃ、貴方に嫌われる。それどころじゃ済まない。傷だって、多くなる。そうなればまた貴方に嫌われてしまうかもしれない。恋は盲目って言うんでしょうか? いや、エスカレートしすぎですね。絵に描いたような、完全なる『ヤンデレ』と呼ばれる者に、彼女たちは変貌してしまったのですから。
 貴方がここに来る寸前のこと……覚えてますか?」
 幼馴染はそこまで一気に言い終えて、今度は俺に質問してきた。
「じゃあ……あれは、本当のことだったのか?」
 夢であってほしいと、思っていた。調理実習の時間中のことだった。包丁を持った3人は、俺の目の前で、それぞれ、刺し違えるように……して……。
 悲鳴、悲鳴が……響く。頭が痛い。血が……たくさん待って……。救急車とパトカーのサイレンの音が……して。
 けれど――今の俺の姿は綺麗なままだった。
「ここはどこなんだ? どうして……俺はここに……」
「私が連れてきたんです。あの事件から、3日が経過してます。3人は幸運なことに一命を取りとめました。今は安静を余儀なくされていますけど。
 単刀直入に言います。貴方には今日から、ここで暮らしてもらいます。
 毎日……1日に数時間だけ、扉の鍵が一つずつ開き……決まった時間に鍵が閉まります。1日に2時間ずつ、彼女たちは貴方を独占することが出来ます。
 時間になったら必ず、部屋に戻してください。そうじゃないと、鉢合わせます。そうなったら――わかりますね? なるべく武器になりそうなものはおかないようにしていますが……ね?」
「なんで……、一緒に暮らす……?」
「貴方が、望んだからですよ」
「望ん……だ?」
「そうです。貴方は友人たちにも自慢げに話してましたね。『3人ともいい子で、選べない』と。ハーレムと冷やかされて、それもいいと思ってましたね。検索サイトで冗談半分で検索したのも知ってます。
 だから、用意したんです。貴方のための、場所。病院から、全員を連れ出して」
「――なんで」
 続く言葉が、紡げない。だって、目の前にいる幼馴染は……。
 学校も、違って。ここ2年以上は、会ってもいなくて。なのに、どうして、いつから、こんな、詳細まで。彼女たちのことも、俺が友達に冗談で話したことまで、どうして、どうして……知っているんだ……?
「だって、貴方のことを世界で1番愛しているのは私なのに。私の目の届かないところで、貴方を巡って血みどろの争いなんて、嘆かわしい。けれど仕方ないわ。彼女たちを放っておいたら、どうなるかわからないし、貴方がハーレムを望むなら、作ってあげようと思って」
 にっこりと、彼女は笑った。さっきまでの、敬語を止めて――幼い頃から見てきた、楽しそうな、無垢な、笑顔を俺に向ける。
「だから、この場所で……1日2時間ずつを分け合いながら。ずーっと、一緒に暮らしましょう」

 幼馴染の後ろにある……4つ目の扉。
 彼女は俺にそれだけ言うと、大きな鉄の扉を開けて、行ってしまった。



今日は艦これとメガミエンゲイジのメンテが重なったので手持ち無沙汰です。
ハッピーエンドを書こうとしてたような気がしたようななんでもないです。
そんなことよりドミニオンのハーレムがいつも上手に使えません。
posted by しょこ at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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