2008年12月07日

宿

「貴女に一目惚れしました! 是非うちの宿に泊まっていってください!」




 旅先でそんな詐欺にあった。
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背中

「ていっ」

 突然彼女に背中を蹴られた。丁度靴紐を結んでいたときだったので、俺はバランスを崩して横に倒れる。

「何!?」

 俺が大声を出すと彼女も流石に驚いて、少したじろいでから「ごめんね」と謝ってきた。


「悪気はなかったんだよ?」

「ふむ」

「ほら、昔「蹴りたい背中」って題名の本があったじゃない」

「あったね」

「男ってそういうのに憧れるのかなって」

「ねえよ」
posted by しょこ at 02:12| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

one

 どんなものも存在と言うのは一つきりで、同じものなんか存在しない。同じように作ったコップだってリモコンだって、使い方や扱い方によって個性が出てくる。人間だとわかりやすいだろう。同じ人なんていない。性格も、顔も、一人一人違うのだ。

「君の名前はなんて言うの?」
「one」

 そういうことをわかっていて、きっと彼は自分に「one」という名前をつけたのだ。だから私は彼をoneと呼ぶことにした。

 私は感動して、友達にその話をした。





「実に利口な犬だと思わない?」

「騙された」
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2007年03月31日

メリーさん。

 突然、電話がかかって来た。相手は非通知。俺は少し訝しく思いながらも電話を取る。
「もしもし」
 そう言った瞬間、視界が真っ暗になる。ひんやりとした感触が目元を覆って、目が開けられなくなる。
 後ろに誰かいる。








「もしもし、私メリーさんよ。今、貴方の後ろにいるの」

「お前は可愛く「だぁれだ」って言えないのか」


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にゃんだこれ。
posted by しょこ at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月29日

めがねをはずす

 貴方に薦められてコンタクトを買った後に約束した。
「私、コンタクトをつけているときは貴方をずっと思うね。貴方が薦めてくれたんだもん」
 数ヶ月経った今、しばらくコンタクトをつけていない。
posted by しょこ at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

時計の針

 給料が出たので部屋の時計を買い換えた。古い時計は置き場がなかったので捨てることにした。
 せっかく捨てるんだし、と思って分解してみることにした。ばきばきと、力をいれながらいろんな部分をはずしていった。
 長針と短針と秒針を横に並べてみる。
「これが分、これが時間、これが秒」
 とりあえず長針を折ってみた。細いけど短針と同じくらいになった。秒針も折ってみた。そんなかんじでいろいろ折っていった。
 セロテープを持ってきて、折れた針をジグザグに固定してみた。ピカチュウのしっぽだと思った。
 紙粘土を買うために家を出た。
posted by しょこ at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すくえないはなし

 彼女は小説を書く。空気を吸ったり吐いたりするみたいなあたりまえのことのように小説を書く。かたかたとキーボードをたたいて、気がつくと小説を書いていて、それを私に見せる。
 彼女の話はいつも、誰も救われない。救われない話ばかりを書くのだ。彼女の小説を読み始めたころは流石に私も滅入ってしまった。今ではもう慣れてしまったけど。
「ねえ、どうして救われない話ばかり書くの?」
「うん?」
「たまには誰か助けてあげてもいいんじゃないの?」
 彼女は首を傾げてから「うーん」と唸ってこう言った。
「だって私、この登場人物たちに助けてって言われてないの」
posted by しょこ at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お弁当箱をあけるとそこは

 ある日友達が自殺した。私は少し仲が良かったので彼女の死をとっても悲しんだ。気がつくと彼女のことばかり考えるようになっていた。どうしてあの子は死んでしまったんだろう。勉強にも生活にも身が入らなくなった。
 ある日夢を見た。お昼の時間にお弁当箱を開けると、そこに彼女が自殺した理由が入っていたのだ。私は見たくないのでそのままぺろりと平らげてしまった。
 目を覚ました。私はのそのそと起き上がって机の電気をつけ、数学の宿題を始めた。

posted by しょこ at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

蛍光灯割れた

 教室の蛍光灯が切れたから、先生が取り替えて、「ここに立てかけておくから割らないでね」と言った。
 みんなそれを聞いていたけれど、いざ休み時間になるとそんなことも忘れて、いつものように駆け回る。案の定蛍光灯は割れてしまった。
 隣のクラスの先生がやってきて、「危ないからどけて」といって一人で掃除を始めた。割れたガラスの破片と一緒に真っ白な粉が飛び散っていた。あの粉がすごく危険らしい。
 気がつくと私はそれで誰をどうやって殺すか考えていた。
posted by しょこ at 15:39| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

たけやぶやけた

 近所に小さな竹やぶがあって、たまに子どもたちが遊んでいる。私もその中の一人で、日のあまりあたらない緑の空を眺めながら、ゆっくりと歩くのがすごく好きなのだ。
 ある日、その竹やぶがなくなった。放火にあって全焼したらしい。竹やぶの近くでうろうろとしていた警察は、しばらくするとうちにやってきた。近所の人が、竹やぶに火をつけている私の姿を目撃したらしい。
 確かに私はその時間家を出ていたし、私のアリバイを証明できる人はいなかった。私がキチガイでない可能性もないから、私がやったのかもしれない。
 私を補導した警察の人は何度も声を荒げて、理由を問いただした。何度も何度も繰り返すのでうるさくなって、一言こう言った。
「今放火した理由を考えてるからちょっと待って」
posted by しょこ at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月25日

お姫様同盟その1

「人魚姫を初めに可哀相だと言った人は誰なのかしら」
 彼女は突然ぽつりと呟いた。
 彼女は最近グリム童話にはまっている。それは「本当は怖い」ほうだったり、あたしが昔聞いたことがあるほうだったりといろいろなのだけど、少なくともあたしを怖がらせて遊んだりはしない。
「好きな人を思ったまま死ねたら、それってすごく幸せなことだわ」

 時々彼女はあたしの知らないどこか遠くに行ってしまうことがある。あたしの知らない彼女はどこかとても寂しそうで、それでも彼女を助けることはできない。

「もしもあたしが人魚姫の姉なら、王子もあの魔女もどっちも殺して、人魚姫を助ける」

 なんとなく彼女が人魚姫な気がして、ぽつりとそう呟いた。
 どうか彼女を連れて行かないで。
 
 彼女は本当は幻で、明日にでも消えてしまいそうで怖い。
posted by しょこ at 11:38| Comment(0) | TrackBack(1) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月24日

リスカの魔法

 願わくばただ、貴方の隣で、貴方にみとられて、死んでしまいたかった。

「手首でも切ろうかな」
 ある日、私は友達の前でぽつりと呟いた。どうしてそんな言葉を吐いたのか私もよくわからない。彼女がどんな反応をするか、ただ見たかったのかもしれない。
「え、死ぬの? やだやだ」
「死なないよ」
「え、あ。リスカってこと?」
 そう、そうすれば忘れられるかもしれない。彼との約束を律儀に守る私は死んでしまう。
「アオはアオだから、あたしは別に嫌いになったりしないよ?」
「そう」
「ただね、気になっていることがあるの」
 彼女はそう言って、持っていた紙コップをテーブルの上に置いた。
「リスカしたあとって洗い物とかどうするのかな」
 彼女は本当に真面目そうな顔でそう言った。
「だってカッターとかで切るんでしょう? 絶対染みるよね。お風呂とシャンプーはどうなの? もしかして、リストカッター用の防水絆創膏でもあるの?」
 何処の誰が、今までリスカ後のことを考えたことがあっただろうか。しかも、傷が残るとかではなく、切った直後のことを。
「それともリスカ用特殊傷薬があって、それを塗るとすぐに治るとか」
「ぷっ……」
 私は思わず吹き出してしまった。おかしいというかなんというか、なんて正直な子だろう。
「渚、あなた天才だわ」
「え? 何かおかしなこと言ってる?」
「言ってる」
 私は笑いが止まらなかった。だって、こんなことを言われるなんて私は想像していなかったから。
「笑いすぎぃ」
 彼女はなんだか恥ずかしくなったらしく、そう言って頬を赤らめた。
「そうね、ごめんなさい」
 私の頬はまだ緩んでいたが、口元を手で覆って見えないようにする。
「そろそろ、授業始まるわね。行きましょうか」
 私はそう言って立ち上がる。渚はコップに入っていたカルピスを急いで飲みほした。
「結局どうするの?」
 彼女は歩きながら、私の顔を覗き込む。
「切らないわ。だって渚が素敵なことを言うから、夢を壊したくなくなっちゃった」
posted by しょこ at 20:06| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月14日

雨の所為

「大丈夫、ゆーちゃんは悪くないよ」
 彼女はやさしく微笑む。振り向いた先に光る紫陽花が彼女の笑顔をいっそう際立てる。
「雨の所為」

雨の所為

 私は雨が降るとおかしくなってしまうらしい。自覚なんて勿論なくて、ぶちりと途切れた空白の時間と事実だけが残る。
 私はどうやら雨の日になると、家で飼っている金魚を一匹、殺してしまうようなのだ。気がついたとき手は生臭く湿っていて、嫌な液体がスカートを汚していたりする。その度に双子の姉であるみなみが、死んだ金魚を庭の紫陽花の下に埋めに行く。
 私は雨の日に突然時計の針が大幅に傾いているのをみると焦って庭へと飛び出すのだ。またやってしまった、そう思って紫陽花の傍へ行くと、女の子が傘を差して地面にうずくまっているのだ。
 私は可愛がっていた金魚の死を悼み、殺したのが自分だということを自覚し、埋めてくれるみなみを思って、泣き出してしまう。
 その度にみなみは「雨の所為」だとそう言って優しく笑うのだ。

 水槽にはたくさんの金魚がいて、みなみはたまに減った分の金魚を買い足してくれる。数え切れないほどいるから、親はその金魚が時々変わっていることにまったく気がつかない。
 うちの金魚は決して大きくなることはないだろう。大きくなる前に、きっと私が殺してしまうから。それでも変わりはいくらでもいる。違いに気がつく人は誰もいない。
 ほら、私と同じだ。
 そう思った日、雨が降っていた気がした。
posted by しょこ at 12:10| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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