2007年03月29日

すくえないはなし

 彼女は小説を書く。空気を吸ったり吐いたりするみたいなあたりまえのことのように小説を書く。かたかたとキーボードをたたいて、気がつくと小説を書いていて、それを私に見せる。
 彼女の話はいつも、誰も救われない。救われない話ばかりを書くのだ。彼女の小説を読み始めたころは流石に私も滅入ってしまった。今ではもう慣れてしまったけど。
「ねえ、どうして救われない話ばかり書くの?」
「うん?」
「たまには誰か助けてあげてもいいんじゃないの?」
 彼女は首を傾げてから「うーん」と唸ってこう言った。
「だって私、この登場人物たちに助けてって言われてないの」
posted by しょこ at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お弁当箱をあけるとそこは

 ある日友達が自殺した。私は少し仲が良かったので彼女の死をとっても悲しんだ。気がつくと彼女のことばかり考えるようになっていた。どうしてあの子は死んでしまったんだろう。勉強にも生活にも身が入らなくなった。
 ある日夢を見た。お昼の時間にお弁当箱を開けると、そこに彼女が自殺した理由が入っていたのだ。私は見たくないのでそのままぺろりと平らげてしまった。
 目を覚ました。私はのそのそと起き上がって机の電気をつけ、数学の宿題を始めた。

posted by しょこ at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

蛍光灯割れた

 教室の蛍光灯が切れたから、先生が取り替えて、「ここに立てかけておくから割らないでね」と言った。
 みんなそれを聞いていたけれど、いざ休み時間になるとそんなことも忘れて、いつものように駆け回る。案の定蛍光灯は割れてしまった。
 隣のクラスの先生がやってきて、「危ないからどけて」といって一人で掃除を始めた。割れたガラスの破片と一緒に真っ白な粉が飛び散っていた。あの粉がすごく危険らしい。
 気がつくと私はそれで誰をどうやって殺すか考えていた。
posted by しょこ at 15:39| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

たけやぶやけた

 近所に小さな竹やぶがあって、たまに子どもたちが遊んでいる。私もその中の一人で、日のあまりあたらない緑の空を眺めながら、ゆっくりと歩くのがすごく好きなのだ。
 ある日、その竹やぶがなくなった。放火にあって全焼したらしい。竹やぶの近くでうろうろとしていた警察は、しばらくするとうちにやってきた。近所の人が、竹やぶに火をつけている私の姿を目撃したらしい。
 確かに私はその時間家を出ていたし、私のアリバイを証明できる人はいなかった。私がキチガイでない可能性もないから、私がやったのかもしれない。
 私を補導した警察の人は何度も声を荒げて、理由を問いただした。何度も何度も繰り返すのでうるさくなって、一言こう言った。
「今放火した理由を考えてるからちょっと待って」
posted by しょこ at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お題

何月だったか忘れたけれど、お友達のオオケムシちゃんがお題をくれて、それでいっぱい小説を書いた。

「たけやぶやけた」
「蛍光灯割れた」
「お弁当箱をあけるとそこは」
「すくえないはなし」
「時計の針」
「めがねをはずす」

ありがとうでした☆
またお願いします。
posted by しょこ at 15:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月25日

お姫様同盟その1

「人魚姫を初めに可哀相だと言った人は誰なのかしら」
 彼女は突然ぽつりと呟いた。
 彼女は最近グリム童話にはまっている。それは「本当は怖い」ほうだったり、あたしが昔聞いたことがあるほうだったりといろいろなのだけど、少なくともあたしを怖がらせて遊んだりはしない。
「好きな人を思ったまま死ねたら、それってすごく幸せなことだわ」

 時々彼女はあたしの知らないどこか遠くに行ってしまうことがある。あたしの知らない彼女はどこかとても寂しそうで、それでも彼女を助けることはできない。

「もしもあたしが人魚姫の姉なら、王子もあの魔女もどっちも殺して、人魚姫を助ける」

 なんとなく彼女が人魚姫な気がして、ぽつりとそう呟いた。
 どうか彼女を連れて行かないで。
 
 彼女は本当は幻で、明日にでも消えてしまいそうで怖い。
posted by しょこ at 11:38| Comment(0) | TrackBack(1) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月24日

リスカの魔法

 願わくばただ、貴方の隣で、貴方にみとられて、死んでしまいたかった。

「手首でも切ろうかな」
 ある日、私は友達の前でぽつりと呟いた。どうしてそんな言葉を吐いたのか私もよくわからない。彼女がどんな反応をするか、ただ見たかったのかもしれない。
「え、死ぬの? やだやだ」
「死なないよ」
「え、あ。リスカってこと?」
 そう、そうすれば忘れられるかもしれない。彼との約束を律儀に守る私は死んでしまう。
「アオはアオだから、あたしは別に嫌いになったりしないよ?」
「そう」
「ただね、気になっていることがあるの」
 彼女はそう言って、持っていた紙コップをテーブルの上に置いた。
「リスカしたあとって洗い物とかどうするのかな」
 彼女は本当に真面目そうな顔でそう言った。
「だってカッターとかで切るんでしょう? 絶対染みるよね。お風呂とシャンプーはどうなの? もしかして、リストカッター用の防水絆創膏でもあるの?」
 何処の誰が、今までリスカ後のことを考えたことがあっただろうか。しかも、傷が残るとかではなく、切った直後のことを。
「それともリスカ用特殊傷薬があって、それを塗るとすぐに治るとか」
「ぷっ……」
 私は思わず吹き出してしまった。おかしいというかなんというか、なんて正直な子だろう。
「渚、あなた天才だわ」
「え? 何かおかしなこと言ってる?」
「言ってる」
 私は笑いが止まらなかった。だって、こんなことを言われるなんて私は想像していなかったから。
「笑いすぎぃ」
 彼女はなんだか恥ずかしくなったらしく、そう言って頬を赤らめた。
「そうね、ごめんなさい」
 私の頬はまだ緩んでいたが、口元を手で覆って見えないようにする。
「そろそろ、授業始まるわね。行きましょうか」
 私はそう言って立ち上がる。渚はコップに入っていたカルピスを急いで飲みほした。
「結局どうするの?」
 彼女は歩きながら、私の顔を覗き込む。
「切らないわ。だって渚が素敵なことを言うから、夢を壊したくなくなっちゃった」
posted by しょこ at 20:06| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月16日

カタカナ05:エンドレスリピート

 繰り返しを続けている間は、きっと永遠。

「こんにちは」
「こんにちは」
「元気?」
「ありがとう」
「今日は天気がいいね」
「好きよ」
「一緒にお散歩に行こう?」
「さようなら」
「お外、あったかいよ」
「こんにちは」

 彼女は少し、少女と話すと、にっこりと笑って手を振った。
「あの子がお友達?」
「そうよ」
「会話がかみ合ってないように見えるんだけど…」
「永遠を望んだ子なの」彼女はにこりと笑った。「あの子は「こんにちは」と「ありがとう」と「好きよ」と「さようなら」を繰り返すことしか出来ないの」

 あたしは少しあの子のことを見ていた。看護婦さんが近づいていって「こんにちは」と声をかけた。「ありがとう」と返した。
「繰り返している間は永遠だから、あの子は永遠を手に入れたんだわ」
 彼女はそう言って施設を後にした。あたしは帰る前に彼女の方を振り返る。彼女と目が合った。
「好きよ」
 そう言われた。

お題配布元
サイト名→無限混色ChoiceTitle
URL→http://www.geocities.jp/asagi222ouki/odai100top.html
posted by しょこ at 20:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 100題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

哲学的01:瞳の中の空

 目をつぶると空があるのは今に始まったことじゃなかった。

 私は空をここしばらくずっと見ていない。辺りは薄暗く、誰も居ない。夜になると悪夢を見る。だから私は目をつぶる。
 目をつぶるとそこには綺麗な空が広がっている。私は緑色の綺麗な芝生を駆け回っている。柔らかな風が吹いて、私は幸せに没頭する。
 そうして、何時間か経った後、がたりと大きな音がして目を開ける。
 悪夢が始まる。

「お姉ちゃんは大丈夫なの?」
 昨日、一年ぶりに姉が発見された。姉は一年前に失踪して、行方がわからなくなっていたのだ。姉は拉致監禁されていて、二つ隣の県のアパートで発見された。犯人は三十代の男だった。
 一年ぶりに会った姉はずっと目をつぶっていた。私が声をかけるとうれしそうに返事をして私の名前を呼んだ。
「お姉ちゃん、目が開けられないの?」
 私は尋ねる。私の姿を見て欲しかった。
「ううん、でも、目をつぶっていないと空が見えないから」


お題配布元
サイト名→無限混色ChoiceTitle
URL→http://www.geocities.jp/asagi222ouki/odai100top.html
posted by しょこ at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 100題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

季節01:滑らかな風

「風が滑らかなわけないじゃない!」
 彼女は突然立ち上がってそう叫んだ。ため息をついて座る。
 彼女は物書きだ。真の芸術家というのに当てはまるのが彼女だと思う。言葉の一つ一つにすごく敏感で、美しいとか美しくないとか、いつでも苦悩に苦悩を重ねながら作品を書いている。
 彼女はコンクールの締め切り前になるとあたしを呼ぶ。そして何もしなくていいから傍に居て、と言う。最初は言っている意味がわからなかったが段々理解できるようになった。
 誰かが傍にいて止めなければ、締め切り前に彼女は狂ってしまう。奇怪な声を上げたり、変なことを口走ったり、平気でする。それでも傍にあたしがいると、少なからず「あ、見られてる」と思って作品に向き直るようだ。それからたまに話しかけてくる。そう、こんな風に。
「ねえ、風が滑らかなわけないわよね?」
「さあ? そういうふうにも使うんじゃない?」
「だって、ナメラカよ、ナメラカっ! 実に美しくないわ! ああ、なんでこんな言葉書こうとしたのかしら……」
 彼女はぶつぶつと呟いて、それからしぶしぶとコンピュータに戻る。
「渚、コーヒー頂戴っ! 私の芸術感性を取り戻すのっ!」
「はいはい」
 あたしはこういう締め切り前の彼女が嫌いではない。

お題配布元
サイト名→無限混色ChoiceTitle
URL→http://www.geocities.jp/asagi222ouki/odai100top.html
posted by しょこ at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 100題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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